2010年6月2日水曜日

オレンジ #30

店に到着し、私は日本へこのRossinを日本へ持って帰る事にした。
他の荷物を置いてRossinで旅をしようかとも考えたが、さすがにそれは無謀だと思い断念した。
私は、後先考えずに店の親父さんに「これを買う」と約束し、お店を後にした。
昼休みの後に取りに来いという事だ。
私達は一度家へ戻り、中華を買って帰った。久しぶりに食べたチャーハンはいつもの何倍もおいしかった。米はやはりおいしい。日本米ではないが、米のおいしさが体に染みついており、日本の「食」の素晴らしさを感じさせてくれた。
正確にいえば日本の飯がうまいというより慣れているからおいしく感じるのかも知れない。
そして時間になり、次はバスでお店へと向かった。お店に着
くとちょうどRossinの解体作業が行われていた。
親父さんの手際がよく私達が到着した頃には3分の1は既に終わっていた。
私は解体したパーツを箱に詰め、親父さんと熱く握手を交わし挨拶をして私の体より大きい段ボールを抱え、バスに乗り込んだ。
バスの事で思い出した事が1つある。
ナオさんと始めてお会いし、飲んだ時の事だ。
「イタリアは、バスが無料なんですごいですね。」
「無料?」
「ローマでは、無料でしたよ。」
「お前それ危なすぎるよ。」
こんなやり取りをしていた。私が無料と思っていたのは間違いで、チケットを買わなければならないらしい。改札などはないがよくバスの中に切符をチェックする方が乗ってくるらしくそこでチェックされるらしい。そこで持っていなかったら多額の罰金が課せられるそうだ。
今考えるとゾッとする話だ。

大きな段ボールで周りの注目を一斉に集め、人の何倍もスペースを取り、変な目で見られながらバスに乗っていると、偶然にもその切符を確認する人が乗ってきた。
私はナオさんが乗る前に買ってくれていたおかげで問題なかったがその時点で捕まっている方が数名いたようだ。

バスで家へと戻り、パッキングを始めた。この時既に17時。私の電車は19時だった。
急いでパッキングをして日本へ送らないといけない。そうしなければもう一日フィレンツェに泊まらなければならない。別に今日中に出る必要はなかったが甘えすぎるのもよくないと思い私は急いでパッキングをした。
パッキングする際に大事な部分にはかなり補強を行った。その時せっかくなら少しでも荷物を減らそうと思い、バックの中の荷物を減らす事にした。
深夜特急の4、5、6巻を持って来ていたが自分の日記を書くどころで全く読めなかった。そこでこの本をクッション代わりに使った。こんなところで役に立つとは思ってもいなかった。
パッキングが終了し、次はMAIL BOXへと向かった。
重い段ボールを二人掛かりでサンタマリア・ノッヴェラ教会を横目に運んでいった。
周りの人から見たら異様な光景だろう。
MAIL BOXへ到着し、配送の手続きを済ませ無事終了。
怒濤の一日だった。

数日間お世話になったナオさんにお礼の意味を込め、二人でビールで乾杯した。この時のビールがこの旅の中で一番おいしいかもしれない。
あと30分で電車の時間だった。
この前お世話になった先輩の工房へお礼を言いに行こうと思い、挨拶をしに行った。
最後の最後までバタバタで急いで駅へと向かった。

駅へ向かう途中、ナオさんに
「こっちで志を持っている人は何か違う空気まとっていますね。」
というと、
「まぁ俺らは外国人やからな〜。」
とナオさんは答えた。
この言葉はずっと頭に残っていた。その言葉の重さをずっとずっと考えていた。

私達は急ぎ足で駅につき、ナオさんに今までにないほどのお礼を言いフィレンツェという最高の町をあとにした。

そして私はミラノへと旅立った。

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