2010年4月24日土曜日

オレンジ #24

ホテルに戻ると昨夜同じ部屋だった2人がいた。
「あれ?ローマに行くんじゃなかったの?」
「電車まで時間があったから一度戻って来たんだよ。」
「何時の電車?」
「17:00だよ。」
「そっか、じゃ俺暇だから2人を見送りするよ。」
「本当!?いいの?」
「いいよ、いいよ。」
こんなやりとりをし、彼らを見送る事にした。その時初めて二人の名前を聞いた。
私の1つ下でジンヌという男の子と私より年上のスンミという姉ちゃんだった。
2人が準備を済ませ、3人でサンタマリア・ノッヴェラ駅へと向かった。
「ジンヌはなんでそんな日本語上手なの?」
「1年間留学していて、なおかつ大阪に彼女がいました。彼女のために頑張って日本語を勉強したんですが、別れました。」
「そうなんだ。でも日本語だけじゃなくて英語もうまいよね?」
「ロンドンへも留学してました。」
ジンヌは凄かった。韓国語、英語、日本語を自由に使いこなしていた。
私達は駅に到着し、ジンヌが何やら慌ただしくチケットと掲示板を照らし合わせていた。どうやら目的地と時間はあっているが、チケットに印字されている列車番号と掲示板に表示されている列車番号が違ったようだ。周りの駅員に確認し、このチケットで大丈夫という事を確認し、その後、列車が来るまでしばらく時間があったためいろんな話をした。
スンミは学校の先生らしく、ジンヌはまだ学生で過去、徴兵で軍に入っていた事もあるようだ。
今回はスンミの学校が長期休みのためにヨーロッパに行きたいという話になったようだ。しかし2人の親がスンミ1人では危ないからジンヌに付いていってくれと言ったようだ。
スンミもこんな弟がいてくれたら安心だろう。
ジンヌがいきなり私に
「一緒に向こうに行こうよ。」
と駅の入り口側を指し、意味深な事を言ってきた。
ジンヌがスンミにここで待っててと言いながら、私達はそちらへ向かう事にした。
「どうしたの?」
「姉ちゃんがタバコ嫌いで吸ったら怒られるんだよ。」
そういう事か。
ジンヌにとっては姉ちゃんの目を盗んでタバコを吸える貴重な時間だったようだ。
途中会話をしているうちに気づいたら私の事を「兄貴」と呼び始めていた。
さすがにそう言われた時は笑ってしまった反面嬉しかった。それにしてもよく言葉を知っている。サヨナラ前のタバコの時間も終わりが近づきスンミのとこに戻る途中ジンヌはこれを食べれば姉ちゃんにバレない、と言いながらMINTIAのような物を食べていた。
私は「いや、確実にバレルよ」と言いながらスンミの元に戻った。

2人の乗る列車が来た。お別れの時間だ。
彼らの乗る車両まで私は見送る事にした。日本と違い改札がないため車両まで見送る事ができる。
ジンヌが最後に私に対してこう言ってきた。
「会ったばかりなのにとても寂しいよ。日本にも行くし、韓国にも来て。」
と嬉しい言葉を言ってくれた。
そうして私は2人をローマへと見送った。

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